私が高校2年生の時、進路指導の先生から卒業後の身の振り方をそろそろ決めないとみた
いな感じで聞かれたとき、よく考えると勉強は好きじゃないというか嫌いだし、公務員と
かサラリーマンになっている自分は想像もできなかった。
友達のお父さんの影響で美容学校に行くことになったんだけど、美容業界のことなんて全
く知らないし、実際入学してみて完全に道を誤ったと気づいた。
100人近くいた同期の中で男は10%くらい、ヤンキー(笑)やガラの悪そうなのがいっぱいい
て、なんじゃこりゃ!と思ったのが最初の印象。
学科は退屈極まりないし、与えられたウイッグの髪の毛を触ると「こんなものどうにもで
きるかいっ」て思った。
ところがワインディングが始まると、これが意外に性に合ってて同じことの繰り返し、少
しづつタイムが縮まること、きれいになっていくことに面白さも感じてきた。
そんな感じでとても優秀とは言えない成績で卒業したわけだけど、卒業間近に将来のビジ
ョンを描く授業があった。
多くの生徒が自分の店を持つとか、ブティックや花屋とコラボしたサロンを持つみたいな
夢だったように思う。
昔は今より独立志向だったのか、美容師=自分の店みたいな感じだったんだね。
でも卒業から35年以上たった今、自分の店を持っている人は2%もいない。
要するに単純であって、怖いもの知らずだった。
自分の店を持つのがいいとか悪いとかではなく、今の学生やアシスタントの子たちの目標
は[いいスタイリストになって、指名をバンバンとって、いい給料を稼ぐ]ところにあ
るように思うし、美容学校も美容室側も「美容師の目指すところはそこです!」みたいなお題
目を唱え続けている。
その[いいスタイリスト]の年齢が大体20代後半から30代後半にあたり、その後の人生設
計について美容学校も美容室側も示されていないのが現状なんだね。
人の人生で一番お金がかかるのは40代50代、そこに対して美容業界は沈黙を続け、夢とか
ビジョンとかかっこいいことを言ってごまかしている。
そこに大きな問題があるんだよ。
「生涯を通じて美容の道で食べていける会社」
これがうちの目指すところであって、道半ばだけど今会社には新人から60代のスタッフさ
んがいる。
「生涯・・・」というのは簡単ではないから当然しっかりとした技術がいる、高いコミュ
ニケーション力も必要、30代幹部になればマネージメント力が要求され、40代50代のスタ
イリストには付加価値の高い仕事が求められる。
組織としてはいろいろな人が働ける環境を整え、商品を独自に開発し、ITを使って効率よ
く販売できる仕組みをつくる。
色々なことを社員みんなで知恵を絞ってやることで40代でも50代でも60代でも働ける環境
はできるんだよ。
100年企業を目指してるうちにとって、スタッフの生涯は当然の課題であり最重要課題で
もある。